現在位置の階層

  1. ホーム
  2. 「ワラベンチャー」について

「ワラベンチャー」について

ワラベンチャー問寒クラブの活動内容の紹介をします。

ワラベンチャー問寒クラブの概要(はじめに)

シンボルマーク
おなじみのシンボルマーク

交通安全旗、活動リュックサック、スクールバス等に印刷され広く知られています

現在の子供たちは、「自然体験」はもとより「体験」そのものが不足していると言われている。その現象は、都会の子供たちばかりではなく、ここ問寒別のように周りを自然に囲まれた田舎町でさえも同様なことが言える。自然の中で遊ぶより、一人、TVやゲームに興じるほうが多くなってきている現代の子供たち。そうした子供たちに、「自然の素晴らしさ、友達と一緒に遊ぶ楽しさを味わわせてあげたい」と、PTAをはじめとする地域のお父さん、お母さんは考えていた。「お父さん、お母さんたちの子供の頃は・・・」、野を駆け回り、川で遊び、山を歩き、雪原を雪まみれになって遊んだ。そのころは、自然そのものが生活の場であり、遊びの舞台だった。野も山も友達であり、地域の人々全てが自然の恵みを享受し、自然と見事に共生していたのである。学級崩壊、不登校、いじめ等の学校や子供を取り巻く環境、また、少子化、核家族化、家族としての絆の希薄化、いわゆる家族崩壊、そして地域・家庭の教育力の低下など、ますます子供を取り巻く環境は厳しさを増している。しかし、だからといってそれらに手をこまねいているわけにはいかない。その現状を少しでも改善し、この問寒別の豊かな自然と人情味溢れる人々との温かい触れ合いを通して、そうした社会にうち勝っていく「たくましく心豊かな子供たち」を育てなければならない。そんな思いを「ワラベンチャー問寒クラブ」の活動に託し、学校、PTA、地域が一体となって活動を進めている。

この活動の原点は、「俺達が楽しかったんだから、子供らも楽しいべや」という大人のおせっかいとも言える発想と、大人自身の「遊び心」である。自分たちが楽しめることを、子供と一緒になって楽しんでいくことが、この活動を気楽に、肩を張らずに続けている秘訣かも知れない。

活動を支える問寒別地域の自然と社会的環境

北緯45度に位置する広大な自然

幌延町は、宗谷支庁管内のほぼ中央に位置し、天塩川を境にした天塩町をはじめ、中川町、中頓別町、浜頓別町、猿払村、豊富町に隣接し、西は日本海に面している。問寒別地区は、幌延町市街より28キロメートル南東に位置し、天塩川水系の問寒別川流域に広がる、約6,000ヘクタールの沢地である。周囲は、北海道大学研究林に囲まれ、平野部には広大な牧草地が細長く広がっている。周囲の山野には、季節毎にタケノコ、ギョウジャニンニク、ワラビ、キノコなど山菜が豊富であり、また、清流にはヤマメが群遊する、まさに自然のめぐみ溢れる宝庫である。

過疎地ではあるが確かな営みと純朴な心

問寒別地区の人口は、世帯数130戸、約346人である(平成26年5月末)。産業は、農業、とりわけ酪農が中心で、就業人口の約5割を占めている。離農など過疎化の進行は相変わらず深刻ではあるが、その中でも、後継者が確実に定着し、堅実で安定した経営がなされている。酪農以外には大きな産業はないが、サービス業、土木・建設業などが、地道で確かな営みを進めている。地域の風土は純農村型で、のんびりと朗らかであり、子供たちは、素直で純朴である。

子供たちを育てる大人の輪

問寒別小中学校の児童生徒数は、児童7名、生徒10名の小中併置の極小規模校である。学校を支えるPTA活動には、地域全戸が会員となり、会費の徴収をはじめ、子供たちの教育活動に、様々な形で支援・協力をいただいている。実際に子供が学校に通っているPTA会員は、13戸であるが、学校行事やPTA活動、学級PTA活動などに積極的であり、また協力的である。

ワラベンチャー問寒クラブ発足への背景

豊かな自然と地域の人々から学ぶ場を

問寒別水辺ウオッチングクラブの創立
ワラベンチャー問寒クラブの母体となったのは、子供たちに地域の自然環境を生かした体験活動を進めようと平成6年度に発足した「問寒別水辺ウオッチングクラブ」である。これは、その当時、学校週5日制の実施に向け、月2回の土曜日の休日が定着してきたにもかかわらず、その活用が家族中心で、地域的な活動になっていない現状、地域的に本町と離れていることから、本町で行われる行事にも参加が容易でないこと、更に地域に子供会組織がないことなどの問題点、課題を受け、打開策の一つとして結成されたものである。

設立の趣旨の中には、「本校の教育目標を支えてる基盤は、豊かな自然環境である。地域を取り巻く北大研究林や問寒別川を”遊び場”として求め、その可能性の中に芽吹く”きっかけ”を探し当てながら、地域の人材を指導者として迎え、汗と自然から教えられる豊かでたくましい心の”問寒っ子”の育成を図りたい」 と、豊かな自然とのふれあい、地域の人々とのふれあいを、そして、「ひとり」になりつつある子供たちの触れ合いを求めた「思い」が述べられている。

活動の場は、言うまでもなく問寒別の自然そのものである。特に、今までの学校の教育活動の一環として取り組まれてきた自然体験活動や留萌開発建設部の協力によって実施している「河川調査」等の活動を関連づけ、「問寒別川」を題材として設定した。スタートは学校主導で進められた。しかし、活動展開の主体は、いつまでも「遊び心」をもったPTAや地域の大人であり、遊びを知らない子供たちである。発足当時から、「点」として存在する単発的な一つ一つの活動や協力者としての個々の指導者を、学校や地域と結び、子供と地域や自然とを結ぶ「面」としてとらえられる組織への脱皮が課題としてあげられていた。
ワラベンチャー問寒クラブの発足
そうした機運の中で、平成8年、学校主導型の活動からPTA、地域が主体となった活動へと、組織の質的な転換を図った。その改善策の一つとして、クラブ名、シンボルマークの募集を行った。更に、従来から問寒別小中学校長がクラブの会長をつとめていたものを、会長以下役員を一般、PTAに広げ、どちらかといえば教職員に頼っていた体質を転換し、企画、運営段階から地域一般の人々やPTAが参画できるよう推進委員会の改善を図った。
わらべ(子供たち)とアドベンチャー(冒険)
クラブ名の募集では、たくさんの名前が寄せられたが、心豊かで未来に向かってたくましく生きる子供たちの夢や冒険心を育てたいという思いを表した「ワラベンチャー問寒クラブ」とした。「ワラベンチャー」とは、「わらべ(子供たち)」と「アドベンチャー(冒険)」を合成した造語であるが、地域にも「子供たちを育てる活動体」「子供会」的な組織として、すっかり定着している。
 
活動内容は、従来同様、問寒別地域の四季を感じ取ることのできる活動を定着化し、毎年新たな活動を取り入れつつ、発足当初の趣旨を受け継いだ活動を進めている。活動を支援していただく団体も、問寒別地区連合町内会をはじめ、活動に応じた団体が、快く協力して下さっている。また、幌延町教育委員会からも活動に対する多大な支援と協力を受けている。更に、会員の移動や参加者の運搬には、福祉バスの運行やスクールバスの手配などの配慮をいただくなど、円滑な運営を支えていただいている。

支援団体

◎問寒別地区連合町内会      ◎問寒別釣りクラブ
◎問寒別小中学校家庭教育学級   ◎サロベツアウトドアーカヌークラブ
◎北海道大学天塩地方研究林   ◎問寒別スノーモービル愛好会
◎宗谷開発建設部           ◎問寒別生涯学習センター(サークル連絡協議会)
◎幌延町教育委員会          ◎問寒別小中学校・PTAほか
◎問寒別地区企業団体

ワラベンチャー問寒クラブの組織と活動

組織

PTAを核にしながらも、地域一般の賛同者が、地域のこれからを担う子供たちの育成に直接、企画運営に携わることができるように門戸を開いた組織運営とする。
 
目的や企画運営に関しては、設立の趣旨を生かし、子供たちの夢や冒険心を大切にし、問寒別の自然を体中で味わうことのできるような体験に配慮している。
    • 組織図

目的

問寒別の地域の自然に直接触れる体験を通して
  1. 自然の豊かさに興味・関心をもたせ、自然に対する理解を深める。
  2. 豊かな感受性や自然に対する愛情を培い、自らをよりよいものとする向上心を養う。
  3. 旺盛な意欲とたくましい実践力を養う。

企画と運営

企画上の留意点
  • 問寒別の自然を活用した体験活動とする。
  • 問寒別地域の人材や団体を生かす体験活動とする。 
  • 学校教育活動とは異なる体験を考える。
  • 夢と冒険と遊びの要素を満喫できる活動内容とする。
  • 子供たちのチャレンジや希望を実現の方向で考える。
  • 子供たちの実態を把握し、よりよい体験を準備する。
運営上の留意点
  • 活動計画作成の際、スケジュールに余裕をもたせ、じっくりと時間をかけ試行錯誤繰り返しながら体験できる場とする。
  • 子供相互の対話、協力、友情、自主性が育つような雰囲気づくりや条件整備に心がける。
  • 内容の充実をめざすために、協力者(団体)と共通理解を図り、分担について十分に話し合う。
  • 自然の中での活動であるので、危険や事故に対する予測と対策が必要である。そのために、現地調査を行い、安全の確保と対策について、具体的検討を行い、意志統一を図る。
  • 各行事毎にレクレーション災害保険に加入する。

成果と課題

平成6年度の「問寒別水辺ウオッチングクラブ」からスタートし、子供たちに本物の体験をさせたい、自然の中におもいっきり体を投げさせたいと始まった自然体験活動も定着し、その成果が表れてきている。

子供たちに見られる成果

  • 活動の中でいろいろな人と接する場を通して、感謝・尊敬の心と態度が育ってきた。
  • 初めての体験に対してチャレンジしようとする意欲やねばり強さが培われてきている。
  • 問寒別の自然の素晴らしさを誇りに感じ、積極的に活動している。

クラブとしての成果

  • 父母や地域の方々が組織に加わり、具体的な企画を立案をする中で、地域に生まれ育った人ならではの情報や発想が生かされたより良い活動内容となった。
  • 具体的な活動の話し合いの中で、スタッフの役割を明確にすることにより、学校主体ではなくPTA、地域の方々が主体となって進めていく組織として明確になってきた。
  • 活動に参加していた児童生徒が、現在では社会人となり、組織の一員として活動している。

今後の課題として(体験型から実践型へ)

こうした着実な成果を残している活動である。
 
今、子供たちを取り巻く状況は、ただ単に、自然体験をさせるだけで解決されるような簡単な状況ではない。現代の子供たちは、全てとは言えないが、自分というものを明確にもっていない、周囲の環境に対応していけないひ弱な子供たちである。今まさに、子供たちの「生きる力」を育むことが求められている。ワラベンチャーの活動が、「自然体験を通してたくましい子供を育てる」とは言っても、一朝一夕のものではない。いろんな要素が複雑に絡み合っていることは確かである。しかし、難しいことはさておき、子供と地域の大人が一緒になって考え、手や足、体全体を使って行動すること、更にそれらを自ら反省してまた繋げていくことが大切である。全てを用意し、「はいどうぞ」のような「やらせ」的なあてがいぶちの活動では、活動の主体である子供たちが、「体験させられている」にすぎない。これからは、単なる「体験型」の活動ではなく、子供たち自ら試行錯誤しながら「企画・運営」する「実践型」の活動になっていかなければ、真の意味での自然体験活動とは言えないのではないか。そして、それらをクラブとして、PTA、地域そして大人として、どう支援していくかが大きな課題である。

おわりに

次代を担う子供たち育てるために、学校教育の場はもとより、地域社会にあるあらゆる教育の場と機会を活用して、心豊かにたくましく育って欲しいと願っている。自然体験活動を中核にした「ワラベンチャー問寒クラブ」の活動は、ここ問寒別にあってその果たしている役割は大きなものと自負しているところである。学級崩壊、不登校、いじめ等の学校や子供を取り巻く負の環境、また、少子化、核家族化、家族としての絆の希薄化、いわゆる家族崩壊、そして地域・家庭の教育力の低下など、ますます子供を取り巻く環境は厳しさを増している現状である。
 
それらの危機を脱する解決策は、決して単純なものではない。しかし、私たちは、今の子供たちの心の中に希薄とされている「耐えること、頑張ること」、「優しさ」や「感動」など「心の豊かさ」を呼び戻し、「自然とのふれ合い、友達とのふれ合い」の中から「よろこび」を少しでも感じとり、自らの心の中に焼き付けて欲しいと願い、活動を続けている。
 
ワラベンチャー問寒クラブの活動が、子供たちに「夢と感動」を与え、自らの明るい未来を見つめることのできる子供を育て、それがやがては地域を再生させる力となっていくことを信じている。それがたとえ遠い将来のことであっても、私たち大人の責任、役割として大切なことである。
 
ワラベンチャーに参加した子供たちの目が輝き、満足げな生き生きとした顔で帰る姿を見つめながら、自らの「遊び心」を子供たちの姿にオーバーラップさせつつ、次回の活動の構想を練っている毎日である。